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【滞在体験記】「住田に戻ると、『おかえりなさい』と言われた。」
~旅人として訪れていた町で、3か月暮らして見つけた新しい景色~

2026年9月9日

「10年以上前から旅人として訪れていた住田町。ここに住んだら、どんな新しい景色が見られるのだろう。」そう考え、2025年9月から11月までの3か月間、イコウェルすみたの滞在体験棟で暮らしたのが、神奈川県横浜市在住の須郷信二さんです。


放送や映画、演劇制作などを手掛ける個人事業主として仕事を続けながら、住田町でリモートワークを行いました。滞在のきっかけは、震災後から住田町と関わり続ける一般社団法人邑サポートとのつながりでした。邑サポートの正会員でもある須郷さんは、メンバーから「イコウェルすみた」と「滞在体験棟」の存在を聞き、以前から何度も訪れていた住田町に、今度は実際に住んでみようと考えました。


「旅人として訪れる町」と「実際に暮らす町」


これまで住田町を訪れる際は、数日間の滞在が中心でした。しかし今回は、3か月間という時間を過ごします。「旅人として数日訪れるのと、3か月であれ実際に住んでみるのとで、住田がどんな違った表情を見せてくれるのか期待していました。」


利用前に大きな不安はなかったものの、持病がある須郷さんにとって、大きな病院がないことは少し気になる点だったといいます。結果的には、3か月間を元気に過ごし、その心配は杞憂に終わりました。


仕事の合間に、少しずつ町の日常へ


9月と10月は仕事が忙しく、日中は滞在体験棟でオンライン会議やリモートでの作業を行う毎日でした。仕事の合間には、世田米商店街にある「US COFFEE」でドーナツを買い、「南部屋」でカツ丼を食べる。地域の人との接点を増やそうと、夕食もなるべく外で食べるようにしていたところ、食堂「古鏡」のサンマ定食を毎日のように食べていたこともあったそうです。散歩も日課の一つでした。街が少しずつ紅葉に彩られていく様子や、朝方、山に霧がかかる風景を眺めながら、「美しい場所だな」と感じていました。



仕事のため、月に数回は東京へ戻る生活でもありました。新幹線で住田町と東京を行き来する日々を過ごすうち、あるとき住田町に戻ると、地域の人から「おかえりなさい」と声を掛けられました。「それが嬉しかったですね。」短期の旅行ではなく、町で暮らす時間を重ねたことで、住田町との距離も少しずつ変わっていったようです。


「住田を舞台に、映画や演劇を作れないかな」


11月になり、仕事が落ち着くと、東京から友人たちを住田町に招きました。その中には、若い映画監督や俳優もいました。住田町を案内する中で、友人たちから、「住田に行くなら、現地を舞台にした映画や演劇を作れないかな」という提案がありました。


須郷さんはすぐに「これは面白い」と感じ、邑サポートのメンバーに相談します。町内での調整や会場の確保など、多くの協力を得ながら、映像・演劇作品「住田にて」の制作が始まりました。


準備期間はわずか10日ほど。「松日橋」から始まる、若い旅人が住田の人々と交流する物語を制作し、完成した作品は「まちや世田米駅」の「蔵ギャラリー」で、住民の皆さんにも観てもらいました。「期間も短く、ちょっと強引な企画だったと思います。でも、住田の皆さんが喜んでくださったのでよかったです。」住田町に滞在したことから、思いがけず新しい作品づくりも始まりました。



失敗したお赤飯も、忘れられない思い出


映画・演劇企画のほかにも、住田高校の文化祭や文化・産業まつりを訪れたり、「よりあいカフェ」に参加したりと、さまざまな場所で地域の人たちと交流しました。


中でも忘れられないのが、お赤飯づくりです。上有住を案内してもらった際、新米のもち米をいただいた須郷さんは、「これでお赤飯を作ろう」と思い立ちました。そこで紹介してもらったのが、住田町一の赤飯名人。手ほどきを受けながら挑戦したものの、蒸し器がなかったため炊飯器で炊いた結果、お赤飯は大失敗だったといいます。それでも、「よりあいカフェ」の皆さんは、「美味しい」と言って食べてくれました。「嬉しいやら、申し訳ないやら、忘れ得ぬ思い出になりました。」イベントや特別な企画だけではなく、こうした日常の中で生まれた交流も、3か月の滞在を振り返る上で大切な思い出になっています。


住んでみて増えた、好きな場所


以前から、住田町で一番好きな場所の一つだったのが、「気仙川」に架かる「葉山めがね橋」でした。夏に訪れる機会が多かったこともあり、その清流の美しさに魅力を感じていたといいます。しかし、3か月滞在したことで、お気に入りの場所はさらに増えました。5回も潜った「滝観洞」、「鏡岩」、鮎釣りをする人たちが並ぶ「気仙川」。そして、須郷さんにとって特に印象深い場所になったのが「松日橋」です。


映画の撮影中、大雨によって「松日橋」が流される出来事がありました。須郷さんはすぐに現場へ向かい、その様子を撮影し、映画の一場面にも取り入れました。さらに滞在の終わり頃には、橋が架け替えられる場面にも立ち会うことができました。先達の指導を受けながら、若い人たちが水の中に入り、少しずつ橋を復元していく。その光景を見て、「今では松日橋こそ、住田の象徴だと思っています。」と感じたそうです。


「住田町への解像度が上がった」


今回の3か月間を通して、須郷さんの住田町への印象は変わりました。「住田町への解像度が少し上がり、その結果、より身近な場所に感じられるようになりました。」3か月という時間は、長いようでいて、あっという間でもあります。それでも、短期間の訪問では知ることのできなかった住民の思いや考えに触れ、町の歴史について話を聞く機会もありました。


「この滞在体験記をまとめるにあたり、こんなに書くことがあったんだと驚いています。それくらい密度の濃い、二度とはないかもしれない貴重な時間だったのだと思います。」


住田町は、どんな人に向いている?


須郷さんがイコウェルすみたを勧めるのは、「大都市一極集中や、単一の価値観から距離を置きたい人」。そして、「散歩で行き会う人に『こんにちは』と気軽に言える人」だといいます。


滞在中は、映画を作り、地域のイベントに参加し、町を歩き、人と出会いました。一方で、須郷さんは、住田町での過ごし方はそれだけではないとも話します。「あれもした、これもしたと、馬鹿みたいに動き回った様子をここに書きましたが、何もせず、ぼーっと住田の風に吹かれているだけでも楽しいと思います。」


快適な「滞在体験棟」で仕事をする。地域の人と話をする。町を歩いてみる。あるいは、特に何もせず、その日の風景を眺めて過ごす。


「快適な施設で、自由に過ごせる素晴らしい環境が目の前にあります。あとはそこで何をするか……イメージが膨らみませんか?」


10年以上、旅人として訪れてきた住田町。3か月間実際に暮らしてみたことで、須郷さんにとって住田町は、これまでとは少し違う、より身近な場所になったようです。




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開館時間

10:00~18:00

​休館日

月曜定休、年末年始

料金

見学・共用棟の通常利用無料
※共用棟の貸切利用・オフィス棟・滞在棟は有料となります

​住所

〒029-2311岩手県気仙郡住田町世田米字本町31-2

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